将来的にはほとんどの仕事が自動化できる?RPAの現状と未来
RPA(Robotic Process Automation)が注目を集める状況となりました。
ですが実際にRPAがどのようなことをしてくれるのか、また将来的にどのような技術になるのか分からない方も多いかもしれません。
新しく生まれた分野なのでそのあたりはなかなか難しいものです。
そこで今回はRPAの現状と未来についてみていきましょう。
定型化した仕事を自動化できるツール
RPAはその正式名称を「Robotic Process Automation」と書き、その意味は「ロボットによるプロセスの自動化」というものになります。
ここでいうロボットとはパソコン上で動くプログラムを指し、プロセスはロボットが行う作業です。
つまるところ「パソコン上でプロセス通りに自動で動くツール」がRPAの正体となります。
例えば顧客リストから顧客情報を1つ1つ別のファイルにするような作業について考えてみましょう。
顧客リストには顧客の会社名・住所・連絡先が書かれているとし、これらのデータを記述した新規ファイルを作ります。
このとき、手作業で行う場合は大変な労力を費やすことになるはずです。
ですがRPAを使えばこの作業は直ぐにでも完了することができます。
1度RPAに操作を覚えさせればあとは勝手に同じ操作を繰り返し行ってくれるのです。
調整を少し行えば簡単にこの仕事、つまりプロセスは自動化することができるでしょう。
このように、RPAは定型化している仕事を自動化することができます。
ただこのままではいわゆるマクロとほとんど変わらないツールのように思われるかもしれません。
そこでもう少し詳しく機能についてみていきましょう。
他ソフトウェアも難なく操作可能
例えば先ほどの仕事(顧客リストからファイルを作る作業)において、新しく作るファイルに地図画像も掲載したい場合もRPAなら容易に実現できます。
地図画像を得るにはブラウザを開きGoogleの検索バーに住所を入力し検索、さらに現れた画像をパソコンに保存しそれをファイルに添付するという作業が必要になります。
複雑な作業に思われますが、定型化しているためRPAに覚えさせることは可能です。
他にも別のデータファイルからデータを抜き出して転記したり他にもファイルを作成させるなんてこともできます。
RPAはこのように、他のソフトウェアも容易にプロセスに組み込むことができるのです。
なぜこのようなことができるのかというと、それは操作をレコーディングすることができるためとなります。
プログラム的な動作ではなく、実際に設定する人物がやったとおりにマウスカーソルが移動したりキーボードを入力していくだけなのです。
例えばRPAを起動してレコーディング状態にし、マウスカーソルを左右に振るといった操作を登録し再生すれば延々とマウスカーソルは左右に振られるでしょう。
いわばRPAというのは操作のレコーディングをしてくれるツールといえるでしょう。
そのためプログラム的な解釈は必要ありません。
プログラミング言語を使いWinAPIにアクセスしウィンドウのハンドルを取得してどうこうするといった面倒な作業は一切要らないのです。
ただ単に操作をレコーディングできればそれでよいので誰でも扱うことができるでしょう。
非定型な作業は苦手
RPAは優れたツールではあるものの使える状況はあくまで定型的な作業のみです。
非定型的な作業やイレギュラーな作業となると全く太刀打ちすることができません。
「とにかく導入すれば仕事が楽になる」というツールではないのです。
例えば手書きのデータをデジタルデータにする作業はRPAでどうにかなる問題ではありません。
もし自動化する場合は別途OCRという文字認識ツールを併用しなければならないでしょう。
ただOCRも完璧に手書き文字を認識できるかというとそうでもないので、確認作業は必須です。
むしろ確認作業をするためにかなりの時間を必要とする可能性もあります。
それからデータによって特殊な項目が重要なものも難しいでしょう。
例えば備考欄に書く文章が大切な資料であったり、例外的な記述が必要になる場合は設定することが困難になります。
こういった事例ではまずデータ化できるところとできないところを分離してからRPAを検討するほうが良いでしょう。
このようにRPAは特殊な処理を苦手としています。
RPA化できる作業の洗い出しが重要
RPAには得意な仕事と不得意な仕事が存在しているので上手く使いこなせれば効果を発揮してくれます。
そして会社の仕事にはたくさんの定型的な仕事があるはずなので、まずはその仕事の洗い出しからすると良いかもしれません。
できる作業は非IT系のものも含まれるため、部署を横断して探っていくと良いでしょう。
例えば経理では経費の精算や福利厚生の計算などができますし、営業では申込書の入力などを肩代わりさせることができるはずです。
また流通では在庫管理及び契約の処理などを任せられるかもしれません。
逆に営業における顧客先での交渉や、経営方針の決定などはRPAで行うことは難しいといえます。
洗い出しが進むほどにRPAを適用できるかどうか微妙な作業が見つかることになるでしょう。
よく考慮しながらRPA化を進めていくことをおすすめします。
現在のRPAはClass1
RPAは進化の過程を3つのクラスに分けることができ、現在はClass1の段階にあります。
Class1はいわば巨大なマクロとでもいえる段階で「定型作業の自動化」を主な目的としている形です。
例外的な作業においては未だ人間が対処しなければいけませんが、それでも大部分の作業を楽にしてくれるでしょう。
Class2は「一部の非定型作業の自動化」を目指す段階となります。
AIを取り入れた段階で、AIに作業内容を学習させながら非定型作業や例外処理についても判断を行えるようにするのです。
実際に現在、iOSでお馴染みのSiriを始めとしてAIは実用段階にあるためClass2へ到達するのはそう遠い未来では無いのかもしれません。
Class3は高度に自動化した段階です。
優秀なAIが非定型処理の自動化はもちろん、課題を発見したり社内の意思決定まで担うことができるようになります。
現状では理想に留まっており、倫理的な問題も孕んでいるためこの段階まで到達できる可能性は高いとはいえないかもしれません。
現状の立ち位置はあくまで定型処理の自動化
現状のメインはClass1であり、RPAツールの種類によってはAIを取り入れようとしているものもあるぐらいです。
未だあくまでも設定ファイル通りに動く巨大なマクロであり、それ以上の存在ではありません。
Class2を見越した導入
もしClass2まで到達することができれば仕事を巡る状況は大きく変わることになります。
非定型処理をRPAに任せることができれば資料作りは全てロボットが行ってくれるようになり、人間はただ意思決定や創造性が絡む仕事にのみ携わればよくなるでしょう。
そのときを見越した場合、現在からRPAの扱いに慣れておくことは良い取り組みといえます。
いざClass2の時代を迎えたときに焦ってRPAに手を出すよりは、今からでも導入しておくと良いでしょう。
また同業他社がRPAの扱いに習熟していたとしたら不利な立場に追い込まれるかもしれません。
特に単純な資料作りがメイン事業となっている場合はRPAの導入を今からでもすることをおすすめします。
果たしてClass3は訪れるか
Class3に到達した世界はAIが意思決定まで行う想像上の世界です。
少しSFチックな状況ともいえるでしょう。
実際のところ、権力を有する立場にある人物が自分の意思をAIに委ねることは想像しにくいことです。
そのため実権自体はトップの人間が保持することになるでしょう。
もしAIが発達し社内の人事権についても裁定を行えるようになればディストピアな社会になるかもしれませんが、現実はそう論理的なものでもありません。
ともかくClass3の段階にRPAが到達したときにRPAを使いこなすことができなければ企業としてやっていくことは難しいといえるでしょう。
まずはClass1の現在のRPAに関わるところから始めましょう。
まとめ
RPAの現状と未来についてみてきました。
このツールは定型的な処理を得意とし、非定型的な処理を不得意としています。
こなせる作業を洗い出して適した設定ができれば仕事を効率化することができるでしょう。
将来的にもAIを導入しできることが増えていく見込みなので今からでも扱いに慣れておくと良いかもしれません。
Class3ともなると様々な問題が噴出しそうですが、それはあくまで遠い未来の話です。
今は便利な自動化ツールとしてRPAを考えておきましょう。