無料のRPAツールではどれが最も使いやすいのか?3つの選択肢で条件面を比較
定型的な事務作業を自動化し、業務効率を大幅に向上させる技術としてRPAが企業の間で熱い注目を浴びています。
RPAツールは人的コストの削減に威力を発揮する可能性を秘めた一種のロボット技術ですが、中小企業にとっては導入費用が高額な点がネックです。
そうした企業や個人でも手軽に利用できる無料のRPAとして考えられる3つの選択肢を検証し、どれが最も使いやすいかを考察してみました。
企業向けRPAは導入費用も高額
RPAツールはEXCELやインターネットブラウザ、メールソフトなど複数のソフトを使った作業を横断的に自動化できる点が最大の特徴です。
RPAの開発には当然のことながら多額の資金が必要となるため、多くのRPAツールは有償で提供されてきました。
それらのRPAツールはエンタープライズ向けに開発されて企業ごとにカスタマイズするのが一般的で、導入費用はどうしても高額となりがちです。
RPAツールそのものの利用料金を調べてみると、提供するベンダーや製品によって金額にかなりの差が見られます。
最も高額なRPAツールでは導入費用が1千万円にも及び、数百万円単位の予算が必要なRPAツールも少なくありません。
日本語環境下での利用に適した国内ベンダーの有料のRPAツールを導入しようとすれば、比較的安い例でも何十万円という初期費用が必要だとされています。
無料でRPAを始める場合に考えられる3つの選択肢
小規模の企業や個人事業主の人が最初からそうした高額なRPAツールを導入するには、予算の面で高いハードルがあります。
予算の限られた企業や個人がRPAを導入するには、無料で使い始められるRPAツールを選ぶのが現実的です。
とりあえず無料で使用できるRPAツールを選ぶ際には、以下で紹介するような3つの選択肢が考えられます。
国内ベンダーの開発した有料RPAツールの中には無料トライアル版を提供している例もありますので、期間限定でそうした試用版を利用するのが1つ目の選択肢です。
第2の選択肢としては、英語版ながら完全無料ですべての機能が使えるRPA Expressが挙げられます。
利用できる事業者の規模に条件はあるものの、無料のCommunity Editionが用意されたUiPathが3つ目の選択肢です。
国内ベンダーの有料RPAツールトライアル版
まずはRPAを無料で使ってみる第1の選択肢として、国内ベンダーから提供されているRPAツールのトライアル版を紹介します。
現状では国内ベンダーのRPAツールは基本的にどの製品も有償ですが、期間と機能を限定すれば無料でトライアル版を使える場合も少なくありません。
海外のRPAツールと違って国内のベンダーが開発した国産のRPAツールなら日本語環境に最適化されているため、プログラミングの知識がない人でも戸惑うことがありません。
RPAの開発は海外ベンダーが先行してきた経緯もあるだけに、国産RPAは海外製と比べて種類が多くない現状もありますが、ツールとしての完成度では海外製に負けていません。
業種や企業ごとにカスタマイズが可能で、かゆいところに手が届くような作りになっている点が国内ベンダーのトライアル版RPAツールのメリットです。
機能が限定される試用版は動作確認が主な利用目的
一方でこうした無料トライアル版のRPAツールは長く使い続けると言うより、あくまでも有償版への移行を前提として導入する面があります。
RPAツールに備わっているすべての機能がトライアル版で使えるというわけではなく、使用できる機能が制限されるケースが大半です。
トライアル版を利用できる期間にも制限が加えられることから、今後長期間にわたってRPAを導入してオフィス業務を効率化していく目的には向きません。
そうしたトライアル版のRPAツールを導入するのは、自社のソフトウェア環境できちんと動作するかどうかを本格導入前に検証するのが主な目的なのです。
RPAツールを無料のまま使い続けるのが目的であれば、以下で紹介する第2第3の選択肢が現実的だと言えます。
完全無料で使えるRPA Expressの衝撃
RPAツールを無料で導入する2つ目の選択肢は、Work Fusion社が開発したRPA Expressというソフトウェアです。
RPA Expressには有料のPro版も存在するため、無料のRPA Expressはそのトライアル版に位置づけられています。
とは言え国内ベンダーが提供するトライアル版のRPAツールと違って、RPA Expressには機能制限がありません。
一般的なトライアル版に設定される試用期間もRPA Expressには存在せず、期間の制限なしにすべての機能が使える点が特徴です。
高額の開発費用が必要なRPAツールを、こうした形で完全無料で提供する手法は、世界のRPA市場に大きな衝撃を与えました。
RPA Expressの動作条件
RPA Expressは導入コストがかからないという点で魅力的なRPAツールですが、現時点では英語版のみという点に注意が必要です。
RPA Expressのメニューは日本語化されていないため、英語が得意でない人にとっては使いづらいと感じる可能性もあります。
RPAツールに限らず日本語化されていない海外製のフリーソフトやシェアウェアには、同様のとっつきにくさが付きものです。
RPA Expressは現状でWindowsのみに対応しており、Macなど他のOSには対応していません。
Windows上でRPA Expressを動作させる場合でも64bit版に限定され、32bit版にはインストールできない仕組みです。
RPA Expressの動作環境にはメモリが8GB以上という条件もあって、4GBでもインストールできる場合はありますが、動作はどうしても重くなります。
シェアの高いUiPathにも無料版が存在
UiPath Studioなど複数のツールからなるUiPath社のRPAツールも、RPA Expressと同様に海外製です。
UiPathには有償ライセンスとトライアルライセンスという2種類のライセンスあって、後者は無料で提供されています。
トライアルライセンスでもエンタープライズ用評価版は60日間限定ですが、Community Editionは60日ごとの認証さえ受けていれば使用期間に限定がありません。
ただしUiPathのCommunity Editionを無償で利用できるのは、売上が500万ドル未満で250台未満の端末数という条件を満たした事業所か個人に限られます。
この条件を上回る企業がCommunity Editionを利用する場合は評価とトレーニング目的に限定されますので、この点には注意が必要です。
UiPathのCommunity Editionは使いやすさが特徴
UiPath社は日本法人も展開しているだけに、最新のUiPathは日本語に対応している点がRPA Expressと比較した場合に有利なポイントです。
「レコーディング」「ブラウザーを開く」「クリック」などのボタンも日本語化されていているため、UiPathは一般的な日本語版のソフトと同じ感覚で操作できます。
メニューもすべて日本語で表示されますので、英語が苦手だった人でも迷うことはありません。
UiPathの操作方法がよくわからないという人のために入門用の動画が多数公開されており、日本語のコミュニティも活発で情報が多く寄せられている点でもRPA Expressより有利です。
動作環境がメモリ4GB以上となっているUiPathはRPA Expressほど動作は重くありませんが、8GB以上のメモリがあればよりいっそう快適に操作できます。
機能面でも有料のRPAツールと遜色がないUiPathのCommunity Editionは、とにかく低コストでRPAを導入したい中小企業や個人事業主におすすめです。
まとめ
RPAツールを無料で導入するには利用目的や事業所の規模といった点から総合的に判断し、どのツールを選ぶかを決める必要があります。
事業所の規模が大きく将来的に有料版へと移行する前提での動作確認が目的なら、国内ベンダーのトライアル版RPAツールを試しに導入してみるのが無難です。
徹底して導入コストをかけずに事務作業を自動化しようという目的には、UiPathのCommunity Editionが最も使いやすく現実的な選択肢だと結論づけられます。