電子レンジで2個500Wで2分の肉まんを、3個600Wで温めるには?
電子レンジは、食品の温めに使う家電です。
電子レンジを使う商品の裏を見ると、電子レンジは何Wで何分と指定が書いてあります。
それに従って温めた結果、冷たかったり、逆に熱すぎたりした経験はないでしょうか?
もしくは、電子レンジに指定のワット数がなくて困ってしまったという人もいるでしょう。
電子レンジの仕組み、熱の伝わり方から正しいワット数と時間を考えれば、いつもホカホカに温められるはずです。
電子レンジの仕組み
そもそも電子レンジの仕組みを知らないと、温め時間とワット数の意味が分かりません。
電子レンジとは、端的にまとめると、「マイクロ波で水分子を振動させて温める機械」となります。
マイクロ波って何
マイクロ波とは、要するに光です。
ただし、私たちが見ている光とは違います。
光には波の特徴があり、一つの波の長さ(=波長)が決まっています。
マイクロ波とは、私たちが見ている光よりも波長の長い光の一種です。
具体的には、私たちが見ている光の波長が数百ナノメートルであるのに対し、マイクロ波は1メートル~1マイクロメートルの波長をもっています。
これを強めて発振すると、水分子を振動させることができます。
熱とは分子の振動であるため、これにより水を含む食品は温まるというわけです。
電子レンジのワットって何
普段何気なくセットしている、電子レンジのワット数。
これの意味を知ると、電子レンジの温める強さが分かります。
ワットとは、「一秒あたりの仕事」を意味します。
つまり、「1秒あたりにどれくらいのエネルギーを出すか」、という値がワットになります。
電子レンジの場合、ワット数が大きいほど1秒あたりに食品に与える熱が多いということになります。
このワット数に時間をかけたものをジュール(J)と呼び、エネルギー(または熱量)の単位になります。
どうして指定通りセットしても温まってくれないのか
さて、電子レンジが食品を温める仕組みはなんとなくわかったと思います。
食品会社様はこの仕組みをもとに、適切なワット数と温め時間を計算しているわけです。
しかし、それでも温まってくれない、そんな思いをしたことはないでしょうか?
では一つお聞きします。
「電子レンジが食品に与えた熱は、食品内にとどまり続けますか?」そんなことはありえません。
ホッカホカの肉まんだって冷え切った手で持っていれば冷めてきます。
つまり、電子レンジの中でも熱が逃げているということです。
熱の伝わり方
熱がどう伝わるか、が分かれば、指定通り温めたはずの食品はなぜ冷たいのか、が分かります。
熱の伝わり方には、大きく分けて三通りあります。
熱伝導
一つ目は熱伝導です。
これは、固体の物質を介して熱が伝わる仕組みです。
暖かいものと冷たいものをくっつけると、暖かいものは冷たく、冷たいものは暖かくなっていきます。
フライパンで冷蔵庫に入っていた冷たい肉を焼けば、肉は暖かくなります。
このように、例えば冷えたお皿にのせて電子レンジに入れた場合、お皿に熱が伝わって、食品が思ってたより温まらなくなります。
対流
二つ目は対流です。
これは、液体、気体の物質の熱の伝わり方です。
お湯を沸かすとき、コンロの火から伝わった熱によって、下の方が温まります。
温まった水は、冷たい水より軽くなるため、上に行き、代わりに上の方の冷たい水が、下に行きます。
このようにして、水が上下にぐるぐる移動を繰り返して、全体が温まっていきます。
電子レンジで水分が多くなった食品を温めた場合、食品から出た蒸気に対流熱伝達が起こり、食品の熱が蒸気に使われます。
そのため、水分の多くなった食品を温めると、思ってたより温まらなくなります。
放射
三つ目は放射です。
これは、光によって熱が伝わる仕組みです。
例えば、宇宙には熱を伝える気体、液体、固体などがほとんどないのに、太陽が暖かく感じるのは、太陽の光の放射のためです。
太陽に限らず、物質からは目に見えない光が出ていて、それが熱を伝えることがあります。
さらに、放射による熱の吸収は、熱を伝えられる物質の色によって変わってきます。
たとえば、夏場は黒い服よりも白い服の方が涼しい、という話はよく聞きますね。
これは、白色は光を反射するため、放射による熱の伝わりの影響が小さいためです。
また、紫外線対策の服や帽子は、黒いものが多いです。
これもまた、黒色は光を吸収するため、紫外線を反射させてほかの部分に紫外線が当たることになってはいけないからです。
アルミホイルの上にのせてトースターで暖めた料理は、アルミホイルの方が料理より熱くないです。
アルミホイルは光を反射するので、料理に比べ放射による熱の影響を受けないからです。
(銀色の料理とかだったら別です)このように、放射による熱の伝わりは、身近で影響が大きいものなのです。
電子レンジで加熱する場合、例えば黒い皿を使うと、食品の熱が皿に伝わって食品が冷え、思ったより温まらなくなります。
電子レンジは、食品中の水分子を振動させて加熱するので、陶器やガラスの皿なら電子レンジで直接皿が温まることはありません。
しかし、温まった食品から間接的に熱をもらった結果、食品が冷えてしまうのです。
このように、皿の温度や種類、蒸気といった要因が、食品会社様が想定する温まりを妨害しているわけです。
ワットと時間の決め方
それでは、これまでのことを踏まえて、電子レンジで理論上ちゃんと食品を温めるにはどうしたらいいか、考えてみましょう。
例えば、2個で500W、2分の肉まんを考えてみます。
肉まん一個に必要な熱量を計算してみましょう。
ワット数×時間÷肉まんの数 で算出できます。
(肉まん一個に必要な熱量)=500(W)×120(秒=2分)÷2(個)=30000(J)よって、肉まん1個を温めるのに必要な熱量は30000(J)です。
では、タイトル通り、600Wで3個温めるには、何分にすればよいでしょうか。
肉まん3個を温めるのに必要な熱量は、
30000 (J) ×3 (個) = 90000 (J)
1秒あたり600 (J) の熱を加えることが600Wなので、必要な熱量をワット数で割ると、必要な時間が出てきます。
90000 (J) ÷ 600 (W) = 150 (秒)
つまり、2個500Wで2分の肉まんを、3個600Wで暖めるには、150(秒)、つまり2分半ということになります。
皿にのせて温める場合は、皿に伝わる熱を加味する必要があります。
冬と夏、部屋の温度で皿の温度や皿の大きさ、色、種類によって変わってきますが、10~30秒ほど少し時間を足すと、食品が確実に温まると思います。
こればっかりは経験としか言えませんが、時間を少し足す、という発想で適切な温め時間にたどり着けると思います。
また、500W→600Wと変更することで、温め時間の短縮ができるため、この計算方法で確実に求めることをおすすめします。
ただし、コーヒーなど液体の温めでむやみにワット数をあげると、短い時間にたくさんの熱量を与えることになります。
それにより、突然沸騰して飛び散り、やけどの原因にもなり危険です。
逆に、600W→200Wのように、ワット数を下げて安全に加熱するのに、この計算を使うこともできます。
まとめ
電子レンジの仕組みから始まり、熱の伝わり方から食品が温まるメカニズムを見てきました。
電子レンジのワット数と時間を掛け算すると、必要な熱量が導けます。
ワット数×時間=熱量(決まった値)より、ワット数を決めると時間を導くことができます。
この時間にお皿分を少し足してやり、何回か調整すれば、ホカホカの食べ物を取り出すことができるようになります。