短期から長期まで様々な仮想通貨取引に利用できる「スパンモデル」とは?
仮想通貨の取引は、短期的なものから長期的なものまで様々な取引スタイルがあり、テクニカル分析はそれぞれのスタイルと相性のいいものやや、逆に相性が良くないものがあります。
今回は、テクニカル分析としては珍しく短期的な取引から長期的な取引まで様々なスタイルに対応できるテクニカルの1つ「スパンモデル」についてまとめました。
目次
スーパーボリンジャーとの併用を目的に作られたテクニカル
スパンモデルは日本発祥のテクニカル分析の1つ「一目均衡表」をベースに、日本人トレーダーの柾木利彦氏が改良する事によって開発されたテクニカル分析です。
ベテラントレーダーでさえも完璧に使いこなすことが難しいと言われている一目均衡表において重要視されている要素「雲」と「遅行スパン」に注力した事で、本家一目均衡表よりも読み取りやすく改良されています。
特徴としては、スキャルピングトレードのような短期取引から仮想通貨においては「ガチホ」などと言われる長期に渡ってポジションを保有し続ける取引まで多様な取引スタイルに対応できる点があり、多くのトレーダーに扱いやすい構成になっています。
なお、基本的に同氏が開発したもう1つのテクニカル分析「スーパーボリンジャー」との併用を主眼に置いたテクニカルになっているため、スパンモデルを使用する際は併せてスーパーボリンジャーを併用するのをおすすめします。
スパンモデル単体での効果は薄い点と、スーパーボリンジャー以外のテクニカルとの併用はかなりの研究や慣れが必要な点に注意が必要です。
スパンモデルを構成する要素
スパンモデルは、次の要素によって構成されています。
- 先行スパンA
- 先行スパンB
- 遅行スパン
以上の3つによって作られており、先行スパンAとBの間の部分を「雲」と呼びます。
なお、2つの先行スパンの名称に明確な区分はないため、取引ツールや取引所の種類によっては先行スパンAとBではなく、1と2と呼称される事などもあります。
先行スパンAは短期的な計算によって算出、先行スパンBは長期的な計算によって算出されており、基本的にはこれら2つの先行スパンの位置関係によって現在のトレンドが上昇かあるいは下降なのかを知ることが出来る仕組みになっています。
これに加えて、ローソク足の終値を過去に表示させた遅行スパンを組み合わせる事で、更に売買タイミングを確実に知ることが出来る仕組みになっています。
雲の状態からトレンドの方向性を知る
スパンモデルでは2つの先行スパン(ここでは短期をA、長期をBとします)によって雲が形成されます。
先行スパンAが上、先行スパンBが下の状態では、チャートの方向性は上昇方向へのトレンドが強いと判断する事が出来ます。
逆に先行スパンBが上になり、先行スパンAが下になってしまっている状態ではトレンドは下降方向へと働いている、と言う形になります。
また、雲の幅が大きい=2つの先行スパンの間が開いている状態になればなるほど、現在のトレンドが強く、大きいものであるという判断をすることが出来るようになっています。
例えば、先行スパンAが上で、AとBの幅が広く空いている状態は強い上昇トレンドが発生しているため、買い注文が効果的といった形で判断する事が出来ます。
同時に、先行スパンの上下が激しく入れ替わる状態や、雲が非常に薄るい状態ではトレンドの方向性が定まっておらず、レンジ相場になっているため、レンジ相場向けの取引スタイルで臨む必要があります。
雲はサポート&レジスタンスとして機能する
雲はトレンドの方向性や強さを知る事が出来る、と先に書きましたが同時に雲はサポートやレジスタンスとしての機能も有しています。
上昇トレンド中は雲の上限部分がサポートラインとして機能し易く、押し目買いのタイミングを分析する際には重要なポイントになります。
逆に下降トレンド中は雲の下限部分がレジスタンスラインとして機能する事が多いため、戻り売りのタイミングを取る際に強い効果を発揮します。
一方で、トレンドの力が弱まってくるとローソク足が雲の中に入りやすくなるため、雲とローソク足が重なっている時はレンジ相場やトレンドの転換点にある、と考えられます。
売買シグナルは「雲のねじれ」
スパンモデルにおける代表的な売買シグナルとして、雲のねじれがあります。
雲のねじれというのは名称の通り、2つの先行スパンによって作られる雲がねじれる事で上下が逆に転換したタイミングを指し、先行スパン同士のクロスにあたります。
この現象が起きるとトレンドが逆転するとされています。
先行スパンAがBを上回ったタイミングで買いシグナル、先行スパンBがAを上回ったタイミングで売りシグナルになりますが、ダマシになる事も多いため、この時点では「トレンド転換の兆しがある」と言う程度の認識に抑えておくのがおすすめです。
基本的には雲がねじれたことで相場の流れが転換した後に押し目買いや戻り売りでエントリーするのがおすすめの方法です。
ブレイクアウトも狙い目に
雲のねじれが起きた後の押し目や戻りと一緒に気にしておきたいのが、ブレイクアウトです。
トレンドが転換した後は、そこに至るまでに力を発揮していたサポートやレジスタンスの効果が弱くなるため、それらが破られるブレイクアウトが起きる可能性があります。
ブレイクアウトが起きる際は、それまでにため込んでいた力が一気に発揮されるため、短期的かつ大きい動きが起きやすく、利確や損切りのタイミングに注意する必要があります。
反面、しっかりと反応する事が出来れば利益を得る絶好の機会にもなり得るため、しっかりと注視しておくのがおすすめです。
ブレイクアウトを狙う際は、事前に現在のチャートにおけるサポートやレジスタンスがレートのどのあたりに存在しているかについて把握しておくようにしましょう。
遅行スパンでトレンドの強さを知る
雲を見る事でトレンドの方向性や強さを知ることが出来る、としましたが、遅行スパンからもトレンドの強さや方向性を知ることが出来ます。
遅行スパンが、ローソク足よりも上にある場合、相場全体の流れが買い傾向が強く、上昇トレンドが強く発生しています。
対して、遅行スパンがローソク足よりも下にある場合は、相場の流れは売り傾向が強いため、こちらは逆に下降トレンドが強く発生している事になります。
逆に遅行スパンとローソク足が頻繁に交差していたり、遅行スパンの角度が並行に近い場合には相場に方向性が乏しくなっていて、レンジ相場になっているという見方が出来ます。
遅行スパンを用いてトレンド転換タイミングを知る
遅行スパンからもトレンドの転換タイミングを知る事が出来ます。
遅行スパンがローソク足を下から上へと抜いた際には、現在のトレンドから上昇トレンドへと転換するサインになります。
これらとは逆に遅行スパンがローソク足を上から下へと抜いた際には、現在のトレンドから下降トレンドへと転換するサインになります。
基本的には先に触れた雲のねじれに加えて、遅行スパンとローソク足のクロスを見てエントリーのタイミングを取るような形になります。
スーパーボリンジャーとの併用方法
スパンモデルは本来、スーパーボリンジャーとの併用を前提とした作りになっている、というのは先にも触れたとおりです。
実際に使用する場合に注意したいのが、2つのテクニカルを併用すると一口に言っても「1つのチャートに両方を表示する」と言う意味合いではない点があります。
基本的には、「長い時間足のスーパーボリンジャーで方向性を探る」と「取引期間に合わせた時間足のスパンモデルで売買のタイミングを取る」の2工程に分かれます。
例えば、短期的な取引の場合には60分足のスーパーボリンジャーで全体の流れを把握し、5~10分足のスパンモデルでエントリーや利確のタイミングを取る、といった使い方がおすすめの方法の1つになります。
同様に中期的な取引の場合には、日足のスーパーボリンジャーと60分足のスパンモデル、といったようにスーパーボリンジャーは、スパンモデルで使用する時間足よりも長めの物を使用します。
まとめ
スパンモデルは単体では使い辛いため、「今使っているテクニカルに追加しよう」という使い方は難しいですが、反面併用前提に設計されているスーパーボリンジャーとの相性は抜群です。
仮想通貨の取引で行われる事が多い、ある程度の期間ポジションを保有し続けるような長期的な取引においても効果を発揮し易いテクニカルになっているため、スーパーボリンジャーと併用できる環境にある人は一度使ってみるのもおすすめです。