仮想通貨のトレンドの強さを図る事が出来るテクニカル分析「DMI」とは?
仮想通貨の取引をする際に重要になる情報として仮想通貨のレートの動きが上昇と下降のどちらに向き、どの程度の強さを持って動いているのかを知りたいという事は多いかと思います。
そういった時に役立つのが、DMIと呼ばれるテクニカル分析です。
今回はトレンドが発生しているか否かとその強さを知ることが出来るテクニカル分析の1つ「DMI」の使い方についてまとめました。
目次
順張りに適したオシレーター系テクニカル
DMIはDirectional Movement Indexの頭文字を取った名称で、日本語では「方向性指数」という呼び方になります。
オシレーター系の代表格の1つと言っても過言ではないRSIやパラボリックなど多数のテクニカル分析を開発した、J.W.ワイルダー氏が開発したテクニカルの1つで、同氏が開発した他のテクニカルに多い弱点である「一定の方向へ進む力の強いトレンド相場で効果を期待できない」という点をフォロー出来る性質を持ったテクニカル分析です。
国内ではあまり馴染みが無く、一度も触ったことが無いという人も多いDMIですが、海外での信頼性の高さや同氏が考案した他のテクニカルの弱点をフォローできる事などが相まって人気の高いテクニカル分析の1つでもあります。
ちなみに、DMIと言う呼び方以外にもトレーダーや取引ツールによってはDIと呼ぶことがある他、構成要素の1つであるADXと合わせて呼称する事もあります。
DMIを構成する要素
DMIでは以下の3種類の指数が使用される事が多く、これらの指数によって出されたラインを元に分析を行います。
- +DI
- -DI
- ADX
以上の3種類が基本的なものになりますが、これらに加えて指定した期間内のADXの平均値を返すADXRと呼ばれる指数を併用するユーザーも居ます。
+DIは上昇トレンド、-DIは下降トレンドをそれぞれ示す指数になっており、基本的にはこれらの数値がどの程度になったかによって、現在の相場が上昇トレンドにあるのか、あるいは下降トレンドにあるのかを知る形になります。
注意したい点として、+DIと-DIで知る事が出来るのは、あくまでもトレンドがどちらかに傾いているかと言う点だけで、トレンドの強さ自体を知るには別の指数であるADX必要になるという点です。
DMIを用いた仮想通貨のトレードでは基本的には+DIと-DI、そしてADXの数値を用いてエントリータイミングを計る事が出来る他、ADXの数値の高低によって順張りと逆張りのどちらかが有利なのかを知る事が出来ます。
DMIの売買シグナル1「+DIと-DIとADXのクロス」
DMIを用いた売買シグナルの最も基本的なものの1つが+DIと-DIがクロスしたタイミングと2本のDIとADXがクロスする事によって生まれるシグナルです。
買いのシグナルとなるのは、+DIとADXが-DIを下から上へと抜けていったタイミングです。
これは+DIと-DIの位置関係が逆転した事により上昇トレンドへの転換を示したのと同時に、ADXの数値が上がることによってトレンドが発生した事を狙ったシグナルです。
また、このシグナルとは逆に-DIとADXが+DIを下から上へと抜けたタイミングでは、下降トレンドが発生したタイミングになるため、売りのシグナルが発生した事になります。
このシグナルを狙う際に注意したいポイントとしては、これらのシグナルはADXのラインも上へと抜けていくタイミングで初めて機能するという点です。
+DIと-DIのクロスだけではまだトレンドに強さがなく、すぐに反転するダマシである可能性があるため、あくまでもADXが上がったタイミングに限定することでシグナルの正確性を大幅に上げることが出来ます。
DMIの売買シグナル2「3つの指数の位置関係」
強いトレンドが発生している間は、上記で紹介したクロスが起こる可能性が大幅に減るため、エントリーできるタイミングが減ります。
そういった場合に活用する事が出来る売買シグナルが、+DIと-DI、ADXの3つの指数の位置関係を利用したものです。
買いのシグナルは+DIとADXが-DIよりも上に位置している状態です(+DI≧ADX
-DI)。
売りのシグナルの場合にはこれとは逆に-DIとADXが+DIよりも上に位置している状態です(-DI≧ADX
+DI)。
これらの状態がそれぞれのトレンドが発生している状態なため、トレンドをフォローする形でエントリーする事が出来ます。
この方法の場合には、あくまでもシグナルは目安程度に考えておき、他のテクニカルと併用して押し目買いや戻り売りを狙っていくのがおすすめです。
DMIの決済シグナル「ADXの反転」
DMIではADXを利用する事によってトレンドの終了を、±DMの位置関係によってトレンドの転換を察知する事が出来るため、それに合わせて利食いや損切りを行う事が出来ます。
利食いを狙う際には、ADXの数値に注目します。
ADXは上昇・下降のどちらでもトレンドが発生している間は高い数値を維持し、トレンドが弱くなると再び低い水準に戻る性質があるため、ADXが戻るタイミングに合わせる事でトレンドの終わりに合わせた決済をすることが出来ます。
最も分かりやすい例として、ADXが一定数値以上(仮想通貨なら基本は35%以上)に留まっている状態から反落したタイミングは現在のトレンドが終わる可能性を示唆しているため、利食いの決済を行うのがおすすめのタイミングになります。
また、買い注文の場合には+DIが-DIを上から下へと抜けた時、売り注文ではその逆で-DIが+DIを上から下へと抜けた時にトレンドが転換した可能性があるため、損切りをした方がいいシグナルになります。
ADXを読み取る際に注意したいポイント
ADXを読み取る際に注意したい事として、「ADXの数値が高い=上昇トレンド」という勘違いをしてしまわないように注意する必要がある点があります。
ADXの数値はあくまでも現在発生しているトレンドの強さのみを示しているものであり、上昇と下降のいずれのトレンドが強く出た場合でもADXは等しく数値が高くなるようになっています。
そのため、ADXが高い時は上昇トレンドなのではなく現在出ているトレンドが強い、と読み解いていく必要があり、逆にADXの値が低い時はトレンドが弱く、レンジ相場に近いと読み解くことが出来ます。
おすすめのDMIの設定値
仮想通貨の取引にDMIを利用する場合の設定値のおすすめとしては、ADXの計算期間を14に設定する程度で他の数値に関しては殆ど変更する必要がありません。
ですが、唯一の例外として、トレンド発生の基準の%値に関してだけは変更する必要があります。
トレンド発生の有無を判断する事が出来るADXの値はFXや株式投資の際には25%が適当とされており、多くのツールではこの数値がデフォルト設定にされていますが、仮想通貨の場合にはボラティリティの大きさなどの関係から25%設定ではダマシにあいやすくなります。
そのため、仮想通貨の取引に使用する際には35%あたりがトレンド発生のボーダーになるとされています。
DMIと相性のいいテクニカル分析
DMIと併用し易いテクニカルとしては、第一にはRSIが挙げられます。
どちらもJ.W.ワイルダー氏が開発し、DMIはRSIの弱点であるトレンド相場発生時の機能不全をフォローしつつ、DMIの弱点であるレンジ相場時の機能不全はRSIがフォローする、という形を取れるため、使いこなす事が出来れば、トレンド相場、レンジ相場のいずれでも有効に使っていく事が出来ます。
また、RSI以外にも多くのオシレーター系テクニカルとの相性が良く、ストキャスティクスなどと併用することで「ストキャスティクスが低水準の範囲でゴールデンクロス発生」というシグナルに合わせて、ADXの数値を監視する事で相場が上昇するタイミングをしっかりと狙う事が出来るなど、相性も良好なためおすすめの組み合わせの1つです。
また、トレンド系のテクニカルと併用して強いトレンドに乗る事を意識したトレンドフォロー重視の取引スタンスにも使用する事が出来ます。
まとめ
DMIは日本人には馴染みのないテクニカル分析である事に加えて、仕組みが若干複雑かつ他のテクニカルとは異なる部分が多いなど、初見では扱い辛そうな部分が目立ちますが、慣れてしまえばレンジからのトレンド発生やその逆など、様々な場面で役に立ちます。
また、仮想通貨のチャートとの相性も非常にいいため、トレンドの強さや方向性を知りたい人には是非おすすめのテクニカルです。