NASのデータはどうバックアップすべきか?大切なデータを守る3つの方法
NASは複数のコンピュータ端末でデータを共有する際などのファイルサーバーとして、企業の業務だけでなく個人の間でも多く利用されています。
NASに使われているHDDには平均3年から4年とも言われる寿命があるため、HDD故障によるデータ消失のリスクは頭に入れておかなければなりません。
そうした事態に備えたNASのバックアップ方法を3種類紹介するとともに、それぞれのメリットとデメリットについても解説します。
便利なNASにもデータ消失のリスク
ネットワークハードディスクとも呼ばれるNASは、LANケーブルや無線LANを通じて複数台の端末とネットワーク接続できるように作られています。
NASはネットワーク上のドライブとして認識されるため、接続した各端末間でNASのHDDに保存されているデータを共有できる仕組みです。
同様のファイルサーバーは以前からオフィスを中心に導入されてきましたが、低価格化が進むNASなら個人でも手軽に導入できます。
家庭で複数台のパソコンを使っている人や、家族が1人ずつパソコン持っているケースなども含め、NASがあればデータが簡単に共有できるようになります。
そんなNASもデータを記録するのにHDDを使っている以上は、一般のパソコンと同様に故障リスクが避けられません。
データがNASの1箇所だけに集中している状態だと、データ消失時のダメージも大きくなってしまいます。
ファイルサーバーとして使う場合はバックアップも不可欠
データをバックアップする重要性はNASに限らず、単体のパソコンやスマートフォンのようなモバイル端末でも変わりはありません。
いざというときに備えたバックアップの手段としては、古くはテープメディアやMOのような光磁気ディスクが使われていました。
パソコンのデータを保存するHDDやSSDといったストレージも年々大容量化が進み、記録容量の小さいメディアを使ったバックアップは困難になりつつあります。
NASも最近の機種ではTB単位の容量が普通となっているだけに、バックアップ手段は限られてきます。
同じ容量のNASを2台用意して片方をバックアップ用途とする手もありますが、単体のHDDより高価なNASをバックアップに使う方法はコスト面が課題です。
USB外付けHDDは最も手軽なバックアップ手段
NASを2台用意するよりも低コストでバックアップできる方法としては、USB外付けHDDを使うやり方が挙げられます。
たいていのNASにはUSB端子がついており、USB接続の外付けHDDを接続すればバックアップ先に指定することが可能なのです。
NASの中にはデータを外付けHDDにバックアップするためのソフトが付属する製品も少なくありません。
そうしたバックアップソフトを使えば24時間に1回や1カ月に1回などと、設定した頻度ごとに定期的なバックアップが自動で実施されます。
フルバックアップはNAS内のデータすべてを一括コピーする方法ですが、変更されたデータのみコピーする差分バックアップや増分バックアップは時間を節約できる方法です。
バックアップ先に外付けHDDを使うデメリット
NASのバックアップに外付けHDDを利用する場合は、容量に応じた初期費用がかかるという点がデメリットです。
NASの容量が大きくなればなるほど、バックアップに使う外付けHDDも大容量タイプを用意する必要が出てきます。
とは言え外付けHDDを使ったバックアップ方法にかかるコストは初期費用だけで、それ以降のランニングコストは基本的に発生しません。
月額料金がかかるようなバックアップ方法と比べ、外付けHDDは長い目で見るとコスト的に有利とも言えます。
バックアップに外付けHDDを使う方法は長く使えば使うほど初期費用を回収できる計算ですが、HDDは前述した通り寿命の問題も無視できません。
HDDの寿命と故障リスクは稼働時間に比例する面もあるので、NASのバックアップを取るときだけ接続するという手もあります。
24時間に1回というように頻繁にバックアップを取る設定だと、その都度NASと外付けHDDを接続するのが面倒な点はデメリットの1つです。
災害にも強いクラウドストレージへのバックアップ
NASのバックアップを取る手段として2番目に挙げられるのは、クラウドストレージを利用する方法です。
クラウドストレージはインターネット回線を通じてクラウド上にデータをアップロードできるサービスで、小容量であれば無料で利用できるサービスも存在します。
アップロードしたデータは堅牢なデータセンター内のサーバーに保存されるため、クラウドストレージを使ったNASのバックアップはセキュリティ面でも安心です。
この方法は地震や火災・洪水・落雷といった災害への備えにもなり、万が一オフィスや自宅のNASが被災してもクラウド上のバックアップを使ってデータが復元できます。
大容量データを扱う場合は料金も高額に
NASのデータをクラウドストレージにバックアップする方法にも、メリットだけでなくデメリットがあります。
インターネット回線も高速化したとは言え、まだまだUSB接続の転送速度には及びません。
NASのHDDが故障した場合にはバックアップ先からデータを復元することになりますが、転送速度の違いは復元に要する時間差として反映されてきます。
最新のUSB3.0に対応した外付けHDDが接続できるNASなら、大容量のデータでもたいていは数時間以内にデータ復元可能です。
クラウドストレージにNASのデータをバックアップしていた場合は通信速度がボトルネックとなるため、NASの容量が大きいほど復元に日数を要します。
クラウドストレージの月額料金も容量に比例して高額となるだけに、TB単位の契約だと1年で大容量の外付けHDD1台が買える金額となってくるのです。
RAIDタイプのNASを選ぶという手も
厳密な意味ではバックアップと異なりますが、NASの中にはRAIDと呼ばれる技術を使ってデータ消失リスクに備えた製品も多く存在します。
RAIDというのはHDDに冗長性を持たせるために古くから使われていた技術で、利用するには専用のコントローラーが必要です。
RAID機能を備えたNASでは複数台のHDDを組み合わせて並列処理し、データの同期を取ることで故障しやすいHDDのデータ消失リスクを下げています。
NASもデータを保存する機器という点では外付けHDDと似たような面を持ちますが、CPUやメモリも備えている点では外付けHDDより独立したコンピュータに近い機器です。
RAIDコントローラーを実装したNASは複数台のHDDを備えており、仮に1台が故障しても他のHDDからデータ復元できる仕組みが採用されています。
そういった点ではRAID機能付きのNASは内部でデータを常時バックアップしているのと変わりないため、他のバックアップ方法では安心できないという人におすすめです。
RAIDの種類と安全性
ただしRAIDにもいくつかの規格があって、規格の種類ごとにデータ消失リスクやパフォーマンス性が異なる点は注意が必要です。
RAIDの名称がついている中でもRAID0は例外的な規格で、2台のHDDに分散書き込みすることで容量拡張とパフォーマンス向上が図られます。
RAID0を備えたNASは決して多くありませんが、採用機種を選んだ場合はデータ消失リスクを低くするため他のバックアップ方法が不可欠です。
大半のNASはRAID1かRAID5またはRAID6が採用されており、RAID1とRAID0を併用したRAID10実装の機種もあります。
このうちRAID1は2台のHDDでミラーリングと呼ばれる同期処理を行い、1台が故障してももう1台のデータが残されるためバックアップと同様の目的を果たせる仕組みです。
RAID5にはパリティと呼ばれる誤り訂正データを保存することで、データ消失リスクをさらに低くする技術が使われています。
4台以上のHDDを使ったRAID6はRAID5をさらに強化した規格で、HDD2台分のパリティを同時に記録するため、万が一2台が同時に故障してもデータが復元可能です。
パフォーマンス性という点ではRAID10の方が高く、RAID5やRAID6はパリティを記録する分だけパフォーマンスが低下します。
RAID5やRAID6・RAID10を採用したNASは価格がどうしても高くなりますので、予算と利用目的のバランスを考慮しながら検討するといいでしょう。
まとめ
オフィスで使用する場合でも家庭で使う場合でも、わざわざNASを導入する人はファイルサーバーとしての長時間稼働を前提に考えているものです。
NASに使われるHDDは稼働時間が長くなればなるほど故障リスクが高まるため、データをどのようにしてバックアップするかが問われてきます。
RAIDを備えたNASを選んだ場合でもデータ消失リスクをゼロにはできませんので、外付けHDDやクラウドストレージを使ったバックアップ方法と併用するのが安全です。